製品概要 テレセントリックレンズ

1.テレセントリックレンズとは

一般にレンズを選択する際のひとつの目安に『画角』というものがあります。画角とは撮影される範囲を角度で表したものを言い、図−1で表されるように光学設計的には主光線間の角度で定義されます。

 

テレセントリックレンズとは主光線が焦点を通るように配列された光学系をいい、図−2のように主光線が光軸に対して平行なレンズ、つまり画角が0゜となるレンズを指します。但し、一般のレンズ力タログ等に記載されている画角は、レンズの第2主点とイメージセンサーとを結ぶ光線の角度を表しています(図−3)。
このため同一焦点距離のレンズであればレンズ自体のイメージフォーマットは固定となりますが、使用する力メラのイメージセンサー(CCD)のサイズにより写し込まれる画像の範囲は変化することになるため、一般のレンズでは同一焦点距離のレンズでも画角はイメージセンサーのサイズ毎に異なることとなります。

 

但し、テレセントリックレンズに於いても使用する力メラのイメージセンサーが異なれば、写し込まれる画像の範囲(視野)は異なることになります。また後述するような物体側テレセントリックのように像側では通常のレンズでいうところの画角が存在するものもありますのでご注意下さい。

 

TSS、TSWレンズシリーズは画像処理分野において高精度な計測を行いたい場合や、厚みの異なるワークを同一光学系で撮影して画像処理を行うような場合に、また歪みを極カ抑えた像を必要とする場合など、用途や目的にあわせたラインナップを標準仕様やセミ力スタム仕様においてご提供いたします。

 

 

2.テレセントリックレンズの種類

テレセントリックレンズは先述の様に主光線が光軸に対して平行なレンズをいいますが、使用目的などにより構造は以下の3タイプに分けられます。

 

2-1.両側テレセントリックレンズ

物体側、像側ともテレセントリック構造のレンズを両側テレセントリックレンズと呼び、ワーク側の位置決めが不安定な場合でも、力メラ側の取り付けがラフな場合でも何れもテレセントリック効果があるため片側構造のテレセントリックレンズに比べて、より高精度な測定をする場合に適用すると効果的です。但し、両方向においてレンズの配置をテレセントリックとなるように設計をした場合、一般的には片側構造のテレセントリックレンズに比べてレンズの構成枚数が多くなるため、やや全長が長くなる事がありますので、コンパクトな形状を必要とする場合には適用できないことがあります。

 

2-2.物体側テレセントリックレンズ

図−4に示すように物体側のみをテレセントリック構造とし、像側(一般には力メラ側)は一般のレンズと同じように焦点距離を有するものを物体側テレセントリックレンズと呼びます。原理上は物体側がテレセントリック構造であれぱ一般の画像処理におけるワークの撮影には支障ないこととなりますが、実際には使用する力メラのイメージセンサーの取り付け精度のバラつきや、力メラに対するレンズそのものの取り付けにバラつきがあるため、両側テレセントリックレンズに比べてやや精度が劣る場合があります。

但し、片方向においてのみレンズの配置をテレセントリック性を持つように設計すれば良いため、両側構造のテレセントリックレンズに比較してレンズ枚数も少なく形状をコンパクトにすることが可能です。そこで形状がコンパクトであることが要求される各種検査装置などに適しています。
また、バリフォー力ル変倍率型テレセントリックレンズは一般には物体側テレセントリックであり、作動距離を変えることにより任意の倍率を得ることが出来るため、汎用の画像処理システムや同一光学系を使用し、異なるワークサイズを撮影する必要があるシステムなどに適用可能です。

 

2-3.像側テレセントリックレンズ

物体側テレセントリックと同じく、片側のみテレセントリック性を有する光学系ですが、結像側をテレセントリック楕造としているためCCD力メラなどを使用してワークを撮影するような場合に使用することは少なく、用途としては半導体露光装置のような結像系のシステムに適用されることが一般的なレンズです(図−5)。

但し、像側をテレセントリック構造にすることはCCD力メラとレンズとの接続のバラッキを吸収できる利点があり、両側テレセントリックレンズが物体側テレセントリックレンズと比較して性能的に上回ることの一因でもあります。

 

3.テレセントリックレンズの特長

TSS、TSWシリーズには大きく以下の3つの特長があります。

 

3-1.ピントがズレても像の大きさが変わらない。

通常のレンズでは物体が光軸方向に移動すると像の大きさが変わるために測定誤差が発生しますが、テレセントリックレンズでは物体の位置が移動しても像の大きさが変わりません。図−6は通常のレンズの場合で、ピント位置からワークが光軸方向に移動したときに発生するボケとともに像の大きさも変化していることを図示したものです。

この時、ワークの移動に併せて光軸から像点までの距離も変化する(=像の大きさが変化する)ため、ピントがずれたために生じたボケの中心位置は像点とは重なりません。
よって画像処理により画像の重心位置を求めても、実際の像点そのものの位置が変化しているため、ワークの移動量に比例して実際の像点とのズレ量は大きくなり、結果として測定誤差も大きくなることとなります。
これに対して図−7はテレセントリックレンズで同じようにワークが光軸側に移動した場合ですが、テレセントリックレンズでもボケは発生しますが、主光線は光軸に対して平行であるため像点位置は変化せず(=像の大きさは変化しない)、原理上ではボケが生じても画像処理により像の重心位置を求めれば、像点と重なるため測定誤差は生じないこととなります。
このことにより、テレセントリックレンズを使用して寸法計測をするような場合、機械的に位置決め精度を出すか、画像処理を行う際に、計算上で補正をかけるなどの必要がなくなり、正確で安定した画像計測が可能となります。
 

  • 高精度な寸法測定をする場合
  • 厚みの異なるワークを同一の光学系で画像取り込みをする場合
  • 光軸方向のワーク位置決めがラフな場合

 

3-2.視差による画像の歪みが生じない。

先述した像点が常に光軸に対して平行移動するということによる効果は、像の大きさが変化しないことと併せて、従来のレンズでは画角がある以上避けることが出来なかった視差による画像の歪みが生じないことにもなります。

例えば、図−8のように立体的なワークを矢印の方向から撮影した場合、この映像を立体的に結像できるのであれば視差による問題は生じません。しかし実際には一般的なCCD力メラを使用するのであれば、2次元のイメージセンサーに結像することになるのですから、これを画角のあるレンズを使用した場合であれば図−9のように像点の位置により画像には視差による歪みが生ずることとなります。このことにより画像をもとにして計測を行う場合、画面の周辺では歪みが大きく、例えばピンなどを撮影した場合には、全て同方向を向いているはずのピンが、周辺部に到るにつれて放射状に写り込んでしまうこととなり実際の計測には使用出来ないか、又は複雑な計算を行わなければならないことになり、何れにしても計測結果に誤差を生ずる元となるわけです。

これに対してテレセントリックレンズを使用した場合には、図−10のようにワークの像点が画面の中心位置にあっても画面の周辺位置にあっても視差による影響を受けません。テレセントリックレンズの画像では、同じワークを同一条件で撮影した場合であっても画角が0゜であるために原理的には視差が発生せず、歪みのない画像が撮影できることとなります。

このことにより先のようなピンなどを撮影した場合においても画面の中心部でも周辺部でも全く同一の条件で映し出されることとなるため、周辺部のピンが仮に僅かに曲がるなどしていてもテレセントリックレンズでは正確に映し出すことが可能であり、計測においても誤差を生じさせるもとを発生させないこととなります。

厚みの異なるワークを同一の光学系で画像取り込みをする場合

  • XY軸方向のワーク位置決めがラフな場合

 

3-3.テレセントリック照明との併用により、平板な鏡面状のワークについて安定した画像が取り込める

通常のレンズに同軸落射照明を付加しても照明光線はワークに対して垂直ではない為、図−11のように結像に寄与する照明光線はワークに対して垂直ではありません。
そのため鏡面状のワークの画像撮影では照明のむらが大きく、ワーク表面の微妙な反射率の違いを撮影することが困難です。
この問題を解決するにはテレセントリックレンズに同軸落射照明のユニットを内蔵させ、結像させるための光学系に照明光を逆に通すことにより、簡易に光軸に対して平行な照明光を作り出すことが可能となります。
この照明光をテレセントリック照明と呼びます。テレセントリックレンズにこのテレセントリック照明を付加することにより図−12で示すようにワークに対して垂直な照明光線が与えられ、結像に寄与する光線がワークに対して垂直であり鏡面状のワークの表面の反射率の違いを濃淡画像として取り込むことが可能となります。

  • シリコンウエハ、コンパクトディスク等の傷や刻印、文字の読み取りする場合
  • 金属鏡面の傷検査などの場合
  • ガラスに付いた指紋など反射率の違いを読みとる場合

 

以上のようにテレセントリックレンズを使用することにより、従来のレンズでは不可能であった処理が可能となり、また装置の機械的精度がラフな場合でも容易に高い測定精度が得られることとなります。

以上のようにテレセントリックレンズを使用することにより、従来のレンズでは不可能であった処理が可能となり、また装置の機械的精度がラフな場合でも容易に高い測定精度が得られることとなります。

 

4.テレセントリックレンズの応用事例

4-1.ピン等の検査

一般の光学レンズを使用して、例えばピンの垂直度等を見た場合(写真1、2)、画面の中央部では正確な画像が映し出されますが、画面の端部では視差により物体が曲がって映し出されます。使用するレンズの程度やレンズをセッティングする位置により多少の差はありますが、画像処理によって計算する場合、端部の撮影映像による情報は計測に使用出来ません。そのため一般のレンズを使用する場合には、X−Yステージ等により検査対象物を正確に画面中央部にセットするか、場合によってはレンズの視差の程度を計算して処理結果を補正しなければならないこととなります。また、一度の画像取り込みでは正確な画像情報が得られないため、必要な画像範囲を何度か分割して取り込むこととなり、その為にさらに検査に時間がかかることとなります。

しかしながら、光学系にテレセントリックレンズを使用した場合、同倍率の光学系に比較して画面中央と端部の視差による歪みが極めて小さく、検査対象物が画面上の何れの場所に映し出されていても正確な画像情報が得られます。(写真3、4)

写真1では判りにくいピンの倒れも写真3では明確なことから、計測の際の位置合わせが非常にラフに(極端に言えば画面上に写ってさえいれば)出来ることが判ります。また写真4では写真2と比較して一度の画像取り込みで得られる情報が多いため、分割して撮影する手間や時間が大幅に軽減できます。

4-2.穴等の検査

前項で紹介したピンのような突起物たけでなく、ネジ穴や筒状のワーク等の検査にもテレセントリックレンズは応用可能です。一般の光学レンズで撮影した場合、やはりレンズの画角が原因による視差により側壁が写り込むため、例えば穴径などを計測しようとした場合、正確な計測の障害となる場合があります。さらに先述のピンなどと同じく、画面の中央部に位置決めが出来ていないと側壁が偏って写るため計測はさらに困難となります。(写真5金属製のキャップを撮影)

この場合テレセントリックレンズでは、側壁などの余分な情報を撮らないため穴や筒などストレートに撮影でき、穴径や端部の肉厚などが正確に測定出来ます。(写真6)

この事例では、連続した穴などの底部の撮影、側壁や端部のバリの撮影に応用が可能です。

図−13のようなワークの穴部を一括撮影した場合、一般のレンズでは中央の穴に位置を合わせても、側壁が写ってしまいます。また両側の穴では側壁がそれぞれ偏って写ってしまい、底部の傷なども場合によっては見えない(死角が生じる)事もあります。テレセントリックレンズの場合ではストレートに底部を写しますので、図のように穴が連続していても、全ての穴を同じようにとらえることが可能です。

さらにバリなどの観察の場合では下部からの透過照明により、図−14のように一般のレンズでは穴底部のバリの影しか観察できず側部に付着した異物が正確に撮影できない場合がありますが、テレセントリックレンズではバリや付着した異物などの影が撮影できます。

4-3.高低差のある部品の検査

一般のレンズでは画角が存在するため、対象物がレンズに近けれぱそれだけ大きく映し出されますし、レンズから離れれば画面上では小さく映し出されます。そのため、例えば同じ大きさのものを同じ画面で見た場合でも、振動や位置決めの再現性の不正確さ、力メラ方向に対する部品自体の高さの違いによって大きさが異なって(倍率が変動して)写ります。(写真7)

倍率が安定しないことは、測定の精度そのものに影響するため力メラやワークを正確に固定する必要があり、振動がある場合や、搬送中の場合、同一の光学系で異なる高さのワークが流されているような場合のように固定が出来ないようなケースでは、かなりの工夫をしなければ正確な測定は出来ないとされています。この様な場合でもテレセントリックレンズは有効であり、高低差があっても被写界深度(ワークのピントの合う許容範囲)内であれば倍率変動がないため、正確に大きさの測定が出来ます。(写真8)

この事例は、先に紹介した穴位置などの検査の場合とあわせて、例えば透明ガラス基板の貼り合わせ等に応用できます。図−15のような場合、一般の光学系を使用すると、完全に画面中央部に位置合わせしないと上下のマークが正確に重なり合いませんが、テレセントリックレンズでは上下のマークが同じ大きさで写し出せ、さらに画面上のどこであっても良いため非常にラフな位置合わせが可能であり、その結果として位置合わせにかかる時間の短縮や、位置合わせのためのX−Yステージの簡素化が実現できます。

4-4.傷などの外観検査

テレセントリックレンズでは、同軸落射照明を併用した場合にワーク表面の反射率の差を、実際の画像でコントラストの差として表わすことが可能なため、例えば金属表面の傷や処理の状態(写真9、10)、透明なプラスチックの刻印文字(写真11、12)、ディスク表面の指紋(写真13、14)などをとらえることが可能です。また透過照明を使用して、屈折率の差を映像としてとらえる事も同様に可能です。実際には照明の強度や、表面の状態に左右されるため安定した画像が取れるか否かは、実験により判断する必要がありますが、テレセントリックレンズでは周辺環境の影響を受けにくいため、通常のレンズに比較して容易に照明の設定を行うことが可能です。

ページの先頭にもどる